「進研模試の偏差値が70あるのに、志望校の過去問が全然解けない」――そんな経験をして、模試の数字への信頼が揺らいでいる受験生や保護者の方は少なくないでしょう。進研模試の偏差値が「当てにならない」と言われる背景には、模試の構造的な特性があります。その仕組みを正しく理解することで、偏差値という数字をはじめて「使える情報」に変えることができます。
進研模試の偏差値が高く出やすい理由
進研模試はベネッセコーポレーションが実施する模試で、高校在籍者を対象に実施されています。最大の特徴は「受験者数の多さ」と「受験層の幅広さ」にあります。
河合塾や駿台が実施する模試は、受験を強く意識した生徒が自ら申し込む「外部模試」であるのに対し、進研模試は学校単位で一括申し込みするケースが多く、勉強にあまり力を入れていない生徒も含めて受験します。つまり、受験母集団の学力分布が下方向に広がりやすい構造になっています。
この構造のため、進研模試では同じ学力の生徒でも偏差値が高めに算出される傾向があるとされています。たとえば、河合塾の全統模試で偏差値60の生徒が、進研模試では偏差値65〜70前後の数値を得ることも珍しくないと、受験指導の現場では一般的に言われています。ただし、この差は個人の得意科目や受験タイミングによって異なるため、あくまでも目安として参考にしてください。
文部科学省『学校基本調査』(令和5年度)によると、高校卒業者のうち大学・短大への進学率はおよそ60.7%とされています。つまり、高校生全体の約4割は大学進学を目指していないことになります。進研模試の受験者にはこうした層も含まれるため、偏差値が実際の入試競争を正確に反映しにくいという側面があります(出典:文部科学省『学校基本調査』https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm)。
どの模試の偏差値が入試に近いのか
各模試には、それぞれ異なる「母集団」があります。受験に向けて積極的に動いている生徒が多い模試ほど、実際の入試競争に近い偏差値が出ると一般的に考えられています。
主要な模試を大まかに整理すると、次のような傾向があるとされています。
- 進研模試(ベネッセ)
受験者層が幅広く、偏差値が高めに出やすい傾向があります。全国規模の受験者数の多さは参考になりますが、難関大学を狙う層との比較には向きにくいとされています。
- 全統模試(河合塾)
進学を意識した生徒が多く受験するため、国公立大・中堅私大を目指す層の比較として活用しやすいとされています。河合塾の公式情報(https://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/)でも、入試情報との連携を前提とした活用が案内されています。
- 駿台全国模試・駿台記述式模試
難関大学を目指す層が中心のため、偏差値の基準値は下がりますが、東大・京大・医学部などの志望者との比較には有用とされています。
このため、志望校のレベルに合わせて「どの模試の偏差値を参照するか」を変えることが、受験戦略の基本といえます。難関大学を目指すのであれば、進研模試の偏差値だけを根拠にするのは危険であるという見方が受験指導の現場では一般的です。
進研模試が「当てになる」場面もある
進研模試がまったく無意味かというと、そうではありません。正しい目的で使えば、十分に有益な情報を得ることができます。
まず、「自分の学校内・地域内での立ち位置を把握する」という点では進研模試は有効です。学校単位で一括実施されるため、同じ高校の生徒と直接比較できるという利点があります。定期テストの成績に一喜一憂しがちですが、模試を通じて「校外での実力」を客観視する機会になります。
次に、「学習到達度の確認」という用途でも機能します。特に高校1・2年生の段階では、受験を意識した外部模試よりも、教科書ベースの基礎的な内容を問う進研模試のほうが現在の学習内容との連動性が高く、弱点把握に使いやすい面があります。
また、「推薦入試・総合型選抜の基準」として活用している学校や塾もあります。指定校推薦の学内選考では、進研模試の成績を評価基準に組み込んでいる高校もあるとされており、この場合は進研模試の結果が直接的な意味を持ちます。
偏差値に頼らない受験戦略の立て方
模試の偏差値はあくまでも「参考情報」であり、合否を確定するものではありません。入試本番で問われるのは、その大学の問題が解けるかどうかです。偏差値という抽象的な数字より、「過去問で何点取れるか」のほうが、合格可能性の判断においてより直接的な指標になります。
受験戦略として現実的に効果があるとされているのは、以下のような順序での取り組みです。
- 複数の模試を受けて偏差値の「幅」を把握する
進研模試・全統模試・駿台模試など複数を受験し、それぞれの偏差値がどの程度異なるかを確認します。その差が大きければ、母集団の違いを実感できます。
- 志望校の過去問を早めに確認する
一般的に、高校3年生の夏以降に志望校の過去問演習を始めることが推奨されています。進研模試の偏差値がどれだけ高くても、過去問で合格点に届いていなければ対策が必要であることには変わりありません。
- 合否判定は模試の「判定の根拠」を確認する
模試の合否判定(A〜E判定)は、各模試の母集団のデータをもとに算出されています。進研模試での「A判定」と全統模試での「A判定」は、前提となる母集団が異なるため、同じ意味を持ちません。判定の「前提条件」を理解した上で参照することが重要です。
まとめ
進研模試の偏差値が「当てにならない」と言われる主な理由は、受験母集団の学力層が広く、実際の大学入試の競争相手とは異なる集団と比較している点にあります。文部科学省のデータが示すように、高校生全体の約4割が大学進学を目指していないという現実を踏まえると、学校一括実施の進研模試は母集団の構成として入試競争とは異なる性質を持ちます。
ただし、進研模試には「学習到達度の確認」「学校内の比較」「推薦入試向けの実績」といった活用価値があります。偏差値という数字に一喜一憂するのではなく、「どの模試の偏差値か」「その母集団は何か」を踏まえた上で複数の模試を組み合わせて判断することが、受験戦略の第一歩といえるでしょう。
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
https://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/
https://www.sundai.ac.jp/
https://www.e-stat.go.jp
■ 参考情報
【プロ講師個別指導塾の合格GET】
https://gokakuget.com/
