「志望校なんて高3になってから考えればいい」と思っていませんか。じつはその判断が、受験の結果を大きく左右することがあります。文部科学省『学校基本調査』(2023年度)によると、高校卒業後に大学へ進学する割合は約57.7%にのぼり、多くの高校生が大学受験を経験する時代になっています。それだけに、志望校を決める時期は学習計画のスタートラインそのものともいえます。この記事では、高1から高3のそれぞれの段階でいつ・何を決めるべきかを整理しながら、合格に向けて戦略的に動くための考え方をお伝えします。
「志望校を決める」とはどういうことか
志望校を決めるというと、「どの大学を第一志望にするか」という一点に意識が集中しがちです。しかし現実には、「志望校を決める」という行為にはいくつかの段階があります。
まず最初の段階は、「行きたい大学・学部の方向性を絞る」ことです。理系か文系か、国公立か私立か、地元かどうかといった大まかな方向性が定まれば、それだけで学習の軸が定まります。次の段階は「具体的な大学名・学部名を挙げる」ことで、ここで初めてその大学の出題傾向や必要偏差値を調べられるようになります。そして最終段階が「受験校リストを確定させる」こと、つまり出願する大学を実際に決定するプロセスです。
これら3つの段階を混同したまま「志望校がまだ決まっていない」と焦るケースは非常に多くみられます。高1・高2の段階では「第一段階の方向性」が決まっていれば十分であり、第三段階の確定は高3の秋以降でも問題ありません。焦りとゆとりを、段階ごとに適切に分けることが重要といえます。
一般的に、進路指導は高2から本格化する学校が多いとされています。受験生の方もそのタイミングを一つの目安として、焦らず段階的に絞り込んでいくとよいでしょう。
高1・高2のうちにやっておくべきこと
「志望校は高3になってから」という発想が受験を難しくする大きな原因の一つです。高1・高2の時期にやっておくべきことを、戦略的な観点から整理します。
最優先すべきは「学部・分野への興味を育てること」です。文系・理系の選択は多くの高校で高2進級時に行われます。この選択が志望校の幅を根本的に決めてしまうため、高1のうちから自分が何に興味があるかを探っておく価値は非常に高いといえます。大学のオープンキャンパスは高1・高2でも参加できますし、各大学の学部紹介を読むだけでも方向性が見えてくることがあります。
次に「模試を活用した現在地の把握」が重要です。河合塾の入試情報サイト Kei-Net(2026年3月取得)では、高1・高2向けの模試や共通テスト対策講座が複数用意されており、早い段階から入試を意識した学力把握の機会が提供されています。模試は単に成績を知るためのものではなく、「この分野をどれだけ伸ばせば、どの大学の水準に届くか」を逆算するための道具として活用できます。
そして見落とされがちなのが「入試方式の把握」です。国公立大学を目指すなら共通テストが必須であり、私立大学でも総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜を活用する場合は高1・高2の評定が直接影響します。出願条件を後から知って「もっと早く知りたかった」と後悔する受験生は少なくありません。高1のうちから志望大学の入試方式を一度確認しておくことを強くおすすめします。
高3の春・夏・秋、それぞれのタイミングで何を決めるか
高3に入ると、志望校決定のプロセスが一気に具体化します。各時期に何を決めるべきかを把握しておくことが、計画的な受験を実現するうえで大切な視点といえます。
高3の春(4月〜6月)は「第一志望校の仮決定」に最適な時期です。この段階では完全な確定でなくて構いません。「国公立大学の〇〇学部を目指す」「私立の〇〇大学を第一志望にする」という方針を立て、そこから逆算して必要科目と勉強量を把握することが目的です。仮決定であっても目標があるとないとでは、日々の学習の密度が大きく変わる傾向があります。
高3の夏(7〜8月)は「第一志望と併願校の候補を出す」タイミングです。夏の模試の結果をもとに、現実的な合格可能性を加味しながら受験校の候補リストをつくります。一般的に、「チャレンジ校・実力相応校・安全校」の3層で候補を複数持つことが推奨される傾向があります。夏の時点で安全校まで視野に入れておくと、秋以降の出願判断がスムーズになります。
高3の秋(9月〜11月)は「受験校リストの最終調整」の時期です。この時期の模試の判定と、各大学の募集要項の確認を並行して進めましょう。私立大学の出願開始は年明け1月〜2月が多く、国公立大学の共通テスト出願は10月頃に締め切られます。締め切りから逆算すると、秋のうちに出願先をほぼ固めておくことが現実的です。
共通テストの結果(1月)を受けて出願先を最終確定するのは、あくまで「調整」の段階です。土台となる方針を持たないまま共通テスト後に一から考え始めるのは、時間的にも精神的にも非常に厳しい状況になりかねません。
よくある「決め方の失敗パターン」と対処法
受験で苦労する方の多くは、志望校の決め方に共通した失敗パターンがみられます。
最もよくあるのが「偏差値だけで志望校を選ぶ」パターンです。偏差値は目安として重要ですが、入試科目・配点・出題傾向によって「自分に有利な大学」は変わります。例えば数学が得意な受験生であれば、数学の配点が高い大学を選ぶことで合格可能性が上がる場合があります。偏差値と入試方式の両面から志望校を検討することが現実的な方法といえます。
次によくあるのが「模試の判定に一喜一憂して志望校を下げすぎる」パターンです。高3の夏の判定でE判定が出ても、秋以降の学力向上で逆転するケースは十分にあり得ます。河合塾の入試情報サイト Kei-Net(2026年3月取得)でも「受験生の成績が伸びるのはこれから」「ラストスパートで合格を勝ち取りましょう」という表現が使われており、夏の段階で志望校を諦める必要はないといえるでしょう。
そして保護者の方に特にお伝えしたいのが、「お子さん自身が納得していない志望校」を設定してしまうリスクです。受験は長丁場であり、モチベーションの維持が合否に大きく影響します。お子さんが自分の意志で選んだ目標であることが、勉強を継続する力の源になります。保護者の方の希望と本人の意志のすり合わせを、できるだけ早い段階から丁寧に行うことをおすすめします。
まとめ
志望校を「いつ決めるか」に正解の日付はありませんが、「段階的に絞り込む」という発想が戦略の核心です。高1・高2では興味の方向性と入試方式を把握し、高3の春に仮決定、夏に候補リストを作成、秋に最終調整という流れが、一般的に無理のない進め方とされています。
文部科学省『学校基本調査』(2023年度)が示すように、高校卒業後の大学進学率は約57.7%に達しており、大学受験は多くのお子さんにとって避けて通れない関門です。だからこそ、準備の開始時期と段階的な絞り込みの意識が、結果の差を生む大きな要因になり得ます。
今この記事を読んでいる保護者の方・受験生の方には、まず「自分は今、どの段階にいるか」を確認することから始めてほしいと思います。段階が明確になれば、次に何をすべきかが自然と見えてきます。情報収集・模試の受験・オープンキャンパスへの参加など、今日からできる一歩を踏み出してみてください。
参考情報
- 文部科学省『学校基本調査』(2023年度) https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
- 河合塾 入試情報サイト Kei-Net(2026年3月取得) https://www.kawai-juku.ac.jp/nyushi/
- NHK 受験・教育特集(2026年3月取得) https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/juken/
